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「杉の花粉」の独断と偏見に満ちた愛読書紹介コーナー

「杉の花粉」の独断と偏見に満ちた愛読書紹介コーナー

○ 『我が家のうつ事情』

 『我が家のうつ事情』

 平成18年4月13日をもって職場復帰77日目となります。
 職場復帰77日達成を記念して『我が家のうつ事情』をお知らせします。
 
 何故77日か?と少々疑問に思われる方もみえると思いますが、「酷く疲れていて、単に木曜日に何をしたのか全く思い出せない」のが原因だとは口が裂けても言えません。

 今回の手記『我が家のうつ事情』は、第1部「我が家の『いろは』」と第2部「傾向と対策」の2部構成です。

 第1部「我が家の『いろは』」は、第1章「『我が家』の構成」、第2章「『私』の巻」、第3章「『妻』の巻」、第4章「『弟』の巻」の構成になっています。
 また、第2部「傾向と対策」は、第1章「現在の状況」、第2章「傾向と対策」の構成になりました。

 調子に乗って書いていたらワードで16ページになりました。
 当初は日記として書いていましたが容量が収まらず、フリーページの項目として掲載することにしました。

○第1部「我が家の『いろは』」
●第1章『我が家』の構成」
 平成18年4月13日現在、我が家は、「私」、「妻」の夫婦と「我が弟」、「猫12匹」、「犬5匹」で構成されています。
 
 『猫12匹』と『犬5匹』については、何時か掲載する予定の「猫のいる生活」への日記「我が家の『猫』事情」に詳しく書かせてもらいますのでここでは割愛します。

 「私」と「妻」は共に「うつ病・うつ状態」で俗にいう「精神病院」に通院しています。
 そして「我が弟」は、「多重債務者」として昨年6月に新たに我が家に加わっております。

 この言うなれば、社会通念上、3人とも精神的に問題がある3人ですが、危うい均衡の上に立ちながらも意外に「みんな」満足しながら生活しているのが不思議といえば不思議です。
 
●第2章「『私』の巻」

 「私」は、学校を卒業して直ぐに地方公務員となり、ン十数年、2年前に無事「うつ症状」と診断されました。
 
 信じられないでしょうが、それまでは、酷い時には夕食も取らず、午前1時を廻るまで仕事に追いまくられていたことのある普通の公務員生活を送っていました。

 ある職場では、始業と同時に『部長に回すため、毎日6つの経済系新聞の切り抜き(スクラップ)』を作成します。
 机に新聞を広げると、上司に言われたり、他の部から文書が来たりと原因は様々ですが、部内の課と調整に走ります。
 
 調整というのは調査物とか「新たな仕事」を担当する課の担当者に引き受けてもらう事です。
 皆、今の仕事で残業を強いられている状況ですから、「新たな仕事」は簡単に引き受けてくれません。
 引き受けてくれないと自分ですることになり「誰が責任を取れるんだ!」と上司に叱られます。
 
 ですから、ダマクラカしたり、怒ってみせたり、泣き落としたり、色んな戦術を使い必死です。

 1つの仕事を担当者に押し付けて席に戻ると、更に2つの「調整する仕事」が待っています。
 そこで、また、別の担当者に走り「調整」を行います。
 それを繰り返し、席に戻ると「朝、新聞を広げたままの状態」で午後5時を過ぎています。

 それから、漸く溜まっている自分自身の仕事を始めますので、何時帰れるのか検討もつきません。
 ただ、この時は、電車通勤をしていましたから、最終電車のでる午後11時5分には帰ることが出来るというのが救いでした。

 別の職場では、予算の調整のために自分が担当する部所の課長級と「予算要求に加えるかどうか」で激論になります。
 簡単に引き受けると「何故、今その予算が緊急に必要なのか」財政当局に説明する「理由」や「資料」を用意しなければなりません。

 「必要だから必要なんだ」と言う現状は判りますが、それでは予算は付きません。

 「私」が担当する課で、お昼休みに課長も含め職員が談笑している処に、「私」が入って行って、「一瞬にして笑い声が消えてしまう」経験もあります。

 この時は、車通勤でしたので、夕食も取らず、酷い時には、午前1時を過ぎても帰れない日々が続いたこともあります。

 叱られたり、頭を下げる仕事ばかりでしたので、「自分の命を、自分で守ることが出来ることを確認し、自信を取り戻す」ため、アラブを含めた発展途上国に安売り航空券を片手に、ディパック一つを担ぎ宿も決めず、単独旅行に出かけたりしていました。

 そんな時、ある職場で、「父親の健康状況が悪化」したのに加え、与えられた仕事が嫌で耐えられなくなり、休みがちになります。

 閑職に廻されました。3年間は楽な仕事でしたが、面白くありません。

 その後、ある程度まともな職場に復帰したのですが、こんな生活をしていて徐々に疲れが溜まっていたのか、「自分は本当にこんな生き方をしていて満足して死んでいけるのか」と考えるようになると、仕事に集中できません。

 そんな時、「妻」が「うつ状態」に陥りましたので付き添っていったら、「私」も「うつ状態」と診断された訳です。

●第3章「『妻』の巻」
 彼女は、幼少から口数が少なく、当時の学級担任教諭の「余りの無神経さ」に耐えられず、中学生3年の3学期に登校拒否を始めてしまいます。

 自分が望まない専門学校に入ってから、定時制高校を卒業し、大学の夜学の途中に「出来ちゃった結婚」をして退学した経験があります。

 当時の夫が働かなくなり、二人の子供を抱えながら姑の嫌がらせに耐えられず、訳がわからなくなり少し幼児虐待もあったようで、「うつ病」と診断され、1年を超える入院を強いられました。

 離婚と同時に2人の子供を取り上げられ、実家の家事をしながら何とか社会復帰を果たし、臨時職員として働いていたのが「私」が閑職に飛ばされた職場でした。

 臨時職員を辞めた後、「私」と結婚することになる訳です。

 付き合っていた期間は短いのですが、当然「彼女の経歴」は知っていましたので、それは全く問題ありません。

 でも、彼女のどこに惹かれたのかは、今だに良く解りません。

 4年前に「私」の父親が病床の中、自宅で急死した時に、どうした訳か、既に彼女が自宅におり、呆然とする「私」を励ましてくれたことはハッキリと覚えています。

 父親の法事が一通り終わってから結婚しました。
 ただ、結婚して家にいるのだから「料理くらい作れ!」と未だ「うつ」というものが全く判っていない「私」は「どうしても出来ない」と泣きながら訴える彼女が理解できません。
 
 「彼女」が連れてきた1匹の「猫」が異常繁殖して、近所の眼が冷たくなったこともあるのでしょうが、疲れ果てた「私」を見たり、小言を聞いたりするうちに、「対人恐怖」が出てしまいます。

 「家」から一歩もでることが出来なくなり、電話も怖がるようになりました。
 それでも、「うつ」が判らない「私」の小言は続き大喧嘩をしたことも少なくありません。

 2年前の夏に「以前通院していた先生にもう一度診察して貰いたい」と言い出した時には、彼女の限界を超えていたのでしょう。

 その先生は別の病院に転勤していましたので、何とか見つけ出し、現在、勤めてみえる病院に無理を言って、強引に診察してもらうことになりました。
 
 それが「私」と「妻」が一緒に病院に行くことになったキッカケです。

●第4章「『弟』の巻」
 男ばかりの3兄弟の中で、彼だけは、高校卒業後、直ぐに働いてくれ、貧乏な我が家を支えてくれました。
 「私」も「一番下の弟」も同じ私立大学で下宿生活を送ることになりましたので、 彼が働いてくれなければ、家計はとても廻っていかなかったでしょう。
 
 そのため、「○○(弟の名前)にだけは、家を建ててやってくれ」と言い残して20数年前に母親は亡くなりました。

 その遺言の事を持ち出すと、彼自身は非常に嫌な顔をしますが、「私」と「一番下の弟」は忘れたことがありません。
 
 彼は、共に公務員となった「私」や「一番下の弟」の様に有給休暇を取っては、適当に休むということもなく、毎日必ず出勤する「非常にまじめ」な正確です。
 
 ただ、唯一の趣味が「パチンコ」でした。

 高校卒業後、直ぐに工場で働くストレスや成人する前に母親を無くしたショックもあったのでしょう。
 偶に父親が援助していましたが、自分の給料の範囲内で遊ぶ分には問題はないと「みんな」安心していました。

 7年ほど前に自宅を離れ、他県の系列工場に出向し、その間に彼が勤めていた工場は大幅な人員整理を断行しましたので、休まずに働く彼のマジメな性格と勤務成績が評価されていたのは間違いありません。
 
 2年ほど前に出向先から、人員整理が終わった元の工場に戻り、「私」が結婚していたため、会社の近くのアパートで生活していました。

 昨年の6月に「病気休暇」で家にいる「私」に電話がかかってきます。
 
 「弟さんが8百万円を超える借金をして困っている」と切り出しましたので、「オレオレ詐欺」だとゾンザイに相手をしてしまいます。
 「どうも兄貴には言い出し難いと先に総務課に相談にきたので話を聞いた。今から弟さんを家に帰すので、相談に乗ってやって欲しい。」と彼の上司からの電話です。
 
 「私」は、豹変して丁寧な言い方に変え、迷惑をかけたことを謝ります。

 部屋にいた「妻」にその旨を伝え、「我が弟」が帰ってくるまで作戦会議です。

 父親が残してくれて、未だ相続手続きをしていない「父親名義の貯金」が270万円ほどあるし、生活緊急資金で職場から300万円は借りられると「取らぬタヌキの皮算用」です。

 ショボクレて「ゴメン。ゴメン。」と繰り返しながら弟が帰ってきます。
 叱るどころではありません。先ず借金返済が急務です。

 早速「幾ら借金があるのか」と聞きます。
 「会社に言われて全部の借用書や契約書を確認した。」
 「サラ金8社から約400万円。」
 「『浄水器』や『羽毛布団』のローン残金が約120万円。」
 「新しく車を買ったのでそのローンが丸々120万円。」
 「合計640万円位の借金がある。」

 「貯金や親父から貰った貯金で、この20年間ズッと遣り繰りしてきたが、1ヶ月の返済額が20万円近くになって、貯金も底をついて、今月から支払いが出来なくなった。」

 「緊急の支払いがあるので、5万円でも貸してくれと会社の組合に行ったら、合計で幾ら借金があると聞かれたので800万円位と答えた。」

 「そうしたら、組合幹部が慌てて総務課を呼び出し顔を突き合わせて相談していたが、とてもそんなに金は貸せないと言うので兄貴に電話してもらった。」とのことです。

 「至急支払わなければならない金額は」と聞くと「取り敢えず14万円を待ってもらっている」との回答です。
 翌日、銀行から14万円を引き出し、払い込ませます。
 
 次に結婚して他県で生活している「一番下の弟」に、父親名義の銀行預金を貰いたい旨連絡します。
 弟二人は父親から其々500万円強の生前譲与を受けており、「私」は古く小さいですが、家と土地を相続するので生前贈与は受けていません。

 ですから、父親名義の270万円は葬式代として、「私」が受け取るという兄弟間の暗黙の了解がありましたが、中々言い出せず、相続は一切手を付けずに放ってありました。

 今回はそんな事を言っていられません。

 「一番下の弟」に連絡すると「全く構わない。それより、俺は幾ら負担すれば良い。百万円位ならどうにかなる」と答えが返ってきます。
 未だ幼い2人の子供を抱え、奥さんが働けない状態の彼に負担させる訳にはいきません。

 でも涙がでるほど嬉しい答えでした。

 これで、取り敢えず270万円を用意することができます。
 アパートを止めて、どうしてこういう状況で、新車が買えるのかが不思議でしたが、未だ2ヶ月も乗っていない新車を売り払うことにします。
 幾らで買い取ってくれるか判りませんが、半額として60万円です。

 640万円から60万円を引いて580万円。
 父親名義の銀行預金270万円と生活緊急資金300万円、緊急に払い込ませた14万円で584万円。
 何とか帳尻が合う処まできました。

 非常に不思議なことですが、「我が家」が急に300万円の借金を肩代わりして、弟と同居する状況になっても「妻」は一言も文句を言いません。

 何時も弟が帰って来る度に「先週の土日は何で帰って来なかった。来週帰って来なかったらどうなるか判っているだろうな!」と怒鳴りつける「妻」が「弟」を叱ることもなく、平然としています。

 後からコッソリ聞くと「私にもストレスから何十万円の物を衝動買いした経験がある。話を聞いていると、○○(弟の名前:呼び捨て)もストレスから借金が嵩んでいったとしか思えない。どうして私が怒らなければならないの。」と言う返事です。

 本当に良い奴が嫁になってくれました。

 翌日、病気休暇で休んでいる職場へ向かい職員互助会で交渉します。
 「会員(「私」)の借金でないと生活緊急資金は貸せない。」と先ず切り出されます。
 「同居して生活を共にする家族であれば、借財は戸主に懸かってくる。 『私』の借金と同じではないか。」と反論します。

 「互助会規則に沿って回答している。私だけでは判断できないので少し待って欲しい。」との返事です。
 「貸してくれるのなら幾らでも待つ。貸すことを前提としたテーブルに乗らないのなら、ここで交渉しても意味がない。」

 「弟の借金は「私」が肩代わりすることになる。」
 「当然サラ金で借りることになるだろう。」
 「3年もしないうちに『私』の借金は300万円を超えるだろう。」
 「その時にまた相談にくる。」

 「職員互助会は『会員に、こんなに冷たい処』だと言いふらしながら他の金融機関を廻ってやるから、3年後に300万円キチット用意しておけ!」
と喧嘩腰です。
 
 「職員互助会は貴方だけのものではない」と言うので「『私』もレッキトシタ会員だ」と言って席を立とうとします。

 「チョッと待て。方法を考える。職員互助会からは貸せないかも知れないが、職員信用組合からの低利融資(年率2パーセント)ではどうか。」と聞き返してきます。

 「貸してもらえるなら何処でも良い。何時回答が貰えるのか。」と聞き返します。
 「明日中に回答する。回答次第、融資できるはずだ。」との返事です。

 「私」は豹変して、今までの失礼を詫びて退室します。
 後から聞いたら、この小父さんは「職員互助会で一番偉い事務局長」だったようです。

 その後、労働金庫に寄って融資の可能性について交渉します。
 「全ての金融機関に残高証明書を出して貰って欲しい。貸すかどうかは、その書類が整ってからだ。」と言う返事です。

 「電話1本で借りたサラ金が1つあるらしい。そこが残高証明書を出してくれるとはとても思えない。」と答えます。
 「そんな話は聞いたことがない。『闇金』じゃないのか。『闇金』なら迂闊に手が出せない。市役所の消費者相談所に一度相談したほうが良い」との答えです。

 話は『融資』のレベルを超えています。
 『闇金』の情報をくれたお礼を言って退室します。

 自宅に帰って弟に質問すると「電話1本で借りた。催促も電話でくる。」と言うことです。

 完全に行き詰ってしまいました。
 
 「妻」も『闇金』のことは、少し不安そうです。
 「でも、成るようにしか成らない。」と不安を打ち消してくれます。

 本当に良い奴が嫁になってくれました。

 早速、弟に『闇金』かも知れない1社を除いて、全ての「サラ金」「ローン会社」に残高証明書を送るように連絡させます。

 翌日の水曜日に「職員信用組合から300万円融資する」との連絡が入ります。
 再び職場に向かい、職員信用組合で融資の手続きを行います。
 その日の内に300万円が入金されました。

 翌木曜日に早速「市役所の消費者相談所」に電話します。
 「『闇金』の可能性が非常に高い。『闇金』なら幾ら返済しても付きまとわれる。」
 「昔のことだが、注文もしていないのに数十人分の寿司が届けられたり、通報されて消防車に家が囲まれたケースもあったように聞く。市役所では手が出せない。」

 「偶然だが、この土曜日に『司法書士の無料相談会』がある。そこでプロに相談した方が良い。」との答えです。
 開催場所と時間を聞いて、お礼を言って受話器を戻します。

 「司法書士」に相談してからの方が良いのかも知れませんが、違法な手数料を取る「司法書士」のニュースを新聞でよく見かけます。
 そこで、金曜日に朝から300万円を引き出し、手当たり次第「サラ金」に向かい全額返済して廻ります。
 270万円分返済したところで時間切れになりました。

 土曜日に、「不安を一杯胸に抱いて」弟と二人で、朝9時から開催される『司法書士の無料相談会』の会場に8時半に到着してタバコを吸って待ちます。

 未だ会場を準備している最中です。
 会場の準備が整ったかなと部屋を覗くと「どうぞ、お入りください」と言われます。

 一番目の相談者になりました。

 「借金返済についてなんですが、『闇金』が絡んでいる可能性があるので相談にきました。」と受付で告げます。

 「それなら、堀田(仮名)さんだな。」
 「エッ。僕ですか。」とニシャと笑う司法書士のブースに通されます。

 「『サラ金』の返済は昨日、出来るところは全額返済しました。未だ幾つか残っていますが、何とか資金は確保しています。」
 「資金の一部に相続財産があるので手続きに時間がかかりますが、その間、残る『ローン会社分』は弟の給料で充分返済できます。」
 「でも1社だけ『電話1本で貸してくれた処があり、市役所に相談したら、闇金の可能性が高い』と言うので相談にきました。」と切り出します。

 「その『サラ金』の名前は?」と聞かれます。

 心臓がドキドキ脈打つのが聞こえそうです。

 「○○という『サラ金』です」

 審判を待ちます。

 「○○なら、京都にいる同僚から聞いた覚えがあります。一度電話で確認してみますが、余り質が良くないけれど『闇金』じゃないようですよ。」とアッケナイ答えが返ってきます。

 「そうですか。一度連絡をお願いできますか。」と放心状態でお願いします。

 「それより、昨日全額返済されたとおっしゃいましたが、多分過剰払いだと思われます。先に相談いただけたら良かったのに。」と残念そうです。

 取り敢えず「金はどうにでもなる『闇金』が心配」という状態でしたので、最大の懸念が払拭されました。

 「過剰払いの返却請求はどの司法書士さんにお願いしたらよろしいですか。先生にお願いできますか。」と尋ねます。

 「ここは、公の消費者相談会ですので、司法書士さんの紹介や私への依頼を受けると言うのはチョッと・・・」と口ごもります。

 「それじゃ名刺交換をお願いします。」と自分の名刺を取り出し、堀田(仮名)司法書士の名刺を受け取ります。
 「また、連絡します。」と言うとニコッと笑って「判りました。」と答えてくれました。

 二人でホットしながら家路を急ぎます。

 弟がポツリと一言零します。
 「本当に良い人を嫁さんに貰ったね。」

 「私」は心の底から嬉しくなりました。

 月曜日を待って、堀田(仮名)司法書士に連絡すると「受けさせてもらいます」との回答をいただきました。
 そして「京都の同僚に連絡したら、矢張り○○は『闇金』じゃないそうです」と更に嬉しい答えも用意してくれていました。

 堀田(仮名)司法書士は若くやる気のある人で「『サラ金』が過剰に取り立てるのを信条的に許せない」タイプのようで、最終的に過剰払い分の8割以上の返却を実現してくれました。
 
 「○○が『闇金』かも知れない。」と言う不安だけで、堀田(仮名)司法書士と出会えたことは信じられない位、幸福な出来事でした。

 そして、借金を抱えた弟がショボクレて帰って来た日から1週間後、誰も知らない金融機関から1枚の通知が届きます。

 弟名義で「120万円」の残高を知らせる通知です。

 『母親』に尻を叩かれたのかも知れませんが、『父親』が、『空の彼方』から見守ってくれていました。

○第2部「傾向と対策」
●第1章「現在の課題」   
 第1部「我が家の『いろは』」で現在同居している3人の経緯について書きました。
 ここでは、「言うなれば、社会通念上、3人とも精神的に問題がある3人ですが、危うい均衡の上に立ちながらも意外に「みんな」満足しながら生活しているのが不思議といえば不思議です。」という現在の状況について書かせてもらいます。

 『私』は、この4月に念願適って「出世の見込みが皆無の地方の職場」に転勤となりました。
 新しい職場は、色々問題もあるのでしょうが、先ずプレッシャーがありません。

 事務職の人数が少ないので、様々な雑用(仕事)が舞い込んできます。
 ですが、組織の序列を気にする必要もなく、自分のやりたいように仕事が進められます。

 転勤したばかりで、全てのものが目新しく、本来の仕事は「単純で単調」なのですが、雑用に追われ息をつく暇もありません。

 前の職場に復帰した時の、「意味もなく重いプレッシャー」の中、終業時間をヒタスラ待ち続けていたのが、遠い昔のように感じています。

 通勤もJRに変わり、駅まで弟のスクーター、駅からは「折り畳み式自転車」で合わせて40分くらいの行程です。
 JRは「破砕帯に建設された信じられないコンビナート群」を縫うように走りますが、慣れてしまえば如何ってこともなく、以前は私鉄で、「満員電車のつり革にシガミツイテいた」のに、往復共に殆ど座れますので、非常に身体も楽になりました。

 毎日機嫌の良い「私」を「妻」は、「あれほど仕事に行くのを嫌がっていたのに」と不思議そうに見ています。

 自分が感じるだけなのでしょうが「重いプレッシャー」がどれ程精神的にキツカッタのかを実感しています。

 ところが、「妻」が大変です。
 第1部でも書きましたが、彼女は取り上げられた二人の子供がいるのですが、会うことは許されていません。
 それに、精神的にマイってしまった時の「幼児虐待」に近い行動も気になるようです。

 と言うのは彼女の「姉」に子供が生まれ、その世話をするうちに昔の思いが甦ってきたようです。
 「姉」はそんな彼女の事は良く判っていますので、時間の経過と共「妻」も落ち着いてきました。

 それが、最近になって実家を継いでいる「妹」に子供が生まれました。
 「姉」の時の思いが再び甦ったのでしょうか、実家に帰ることを酷く嫌がります。

 また、「私」が職場復帰して働き出しました。
 そして、「弟」も3交代で働いています。
 ですが「妻」は自分が思うように「家事」が出来ません。

 加えて、2回に渡って「封筒に入れてあった数万円」がなくなる事件が発生し、家に施錠することになります。

 「理想の自分の姿」と「現実の自分」のギャップに「内向」を重ねてしまい、部屋から出ることさえ嫌がるようになり、外で物音がすると緊張して息を潜め、ズッと緊張状態が治まらない状況に陥りました。

 そのため「対人恐怖」が最高に達してしまい、同居する「弟」と話しも出来ない、つまり「私」意外の誰とも話せません。

 それに、「食べる時は食べ続け」、「食べない時は何も食べられない」を繰り返し、1週間毎に体重の増減が5キロあるそうです。

 それが、最近少しずつですが治まってきたようです。
 というのは。

 「弟」のお金は「妻」が管理し、月3万円の「小遣い」がなくなった時には「妻」に申告して1日千円を貰うというルールが出来ています。
 でも、緊急にお金が必要な時用に、「弟」の通帳には1万円以下の残金が残るようにしてあり、事後報告でも良いことにしてあります。

 前日に「弟」の通帳を見て「勝手に引き出している」と憤慨し「弟」に怒鳴りつけた「妻」ですが、それは前月のものだと勘違いに気付いた「妻」は、平然と「今月は勝手に引き出してないだろうな」と論旨を勝手に入れ替えます。
 弟は「引き出していない。」と答えていましたが、どうも後ろめたい処があるようです。

 その翌日が二人揃って病院に行く日でした。
 「自分が生きている意味が判らなくなっている。『私じゃなきゃだめだ』というものが何もない。生きているだけで苦しい」と「妻」が訴えます。

 しばらく黙って「妻」の話を聞いていた主治医が言います。

 「生まれた時も自分の思い通り生まれてきた訳じゃないので、死ぬ時も自分の思い通りにはならないと考えたほうが良いんじゃありませんか。」

 「今まで『生きている意味』を見つけようと大勢の人が考え続けましたが、『答えを見つけた人』は未だいません。」

 「今はトテモ重い荷物を背負っています。その荷物を減らしてから考えると違った味方ができるかも知れませんよ」と続きます。

 二人して声も出ずに聞き入ってしまいました。

 「少しかも知れませんが元気」と「大いに食欲」を取り戻した「妻」が、帰りに「弟の通帳」を記帳します。

 勝手に、前日付けで、引き出されていたことが発覚しました

 昨日の今日です。
 「妻」の怒りは治まりません。

 「金を引き出したから怒っているんじゃない。信じていたのに、昨日『私に嘘』を言ったことが許せない。」と「弟」を呼びつけ怒鳴りつけたようです。
 でも、その後、どうすれば良いんだろうと二人で相談したようです。

 「弟」の「お金の管理」が「妻」の状況が上向くキッカケを作ってくれたようです。
 
 今は我が家への借金も含めて全額返済しましたが、「弟」は、一般にいう「多重債務者」です。
 堀田(仮名)司法書士、労働金庫、職員信用組合も声を揃えて言うことがあります。

 「家族が借金の返済をするのは構わないが、破産など本人が痛い目に会わないと『弟』さんの生活や性格は変わらない。また、同じ事を繰り返しますよ」ということです。

 それが、半年もしないうちに、3万円の「お小遣い」(自分のお金)を貰って、無くなったら1日千円(自分のお金)貰って何とか生き延びる生活が定着しています。

 非常用の1万円を勝手に引き出すなど些細なことです。

 「弟」を、ここまでの状態にしたのは「妻」自身であることに「妻」は気付いていません。
 
 「これは、大変なことなんだ。言うなれば奇跡に近い。○○チャン(「妻」の名前:チャン付け)しか出来ないことじゃないかな。」と言うと「妻」は不思議そうに首を傾げています。

 最後に「弟」です。
 前述した通り、自分のお金でありながら「妻」にお願いして「お小遣い」や「1日千円」の生活資金を受け取って満足しています。

 堀田(仮名)司法書士に言わせれば、少し時間が経てば「オレの金をどう使おうとオレの勝手だ。」と思うそうです。

 でも、「弟」にその傾向は全くありません。
 「妻」と金銭交渉している時に間違って「お母ちゃん」と呼んでしまったことが何回かあるそうです。
 「妻」は、年上である「弟」の「母親」的存在になっているらしく、本人曰く「○○チャン(「妻」の名前:チャン付け)は、怖くて頭が上がらない。」とコボシています。
 
 前述の『「妻」に嘘』を言った夜は、怖くて眠れなかったそうです。
 完全に「妻」の支配下に置かれているようです。

●第2章「傾向と対策」
 「うつ」は人其々に異なります。
 先日「妻」と話をしていたら、『「妻」の「うつ」は、次から次に思いが頭を過ぎり、頭うが回転しすぎて歯止めが利かず、しなければならないことに集中できない』ため、何も出来なくなるそうです。

 『「私」の「うつ」は、頭も身体も着かれ切ってしまって、頭も身体もドウシヨウモナク重くどうしても働かない』ため何も出来なくなります。

 「何も出来なくなる」という症状は同じですが、その過程が全く異なります。

 そのため、「妻」は「弟のお金の管理」や「我が家のお金の管理」など忙しい状況を作り出すことが有効なようです。
 今は、「仏具のお磨き」に嵌まっていてキレイになったと喜んでいます。
 「妻」は、「何かをし続ける。そして成し遂げる」ことが症状を治める特効薬なのでしょう。

 そして、「私」は「極力なにもしない。気にしない。」つまり「とにかく疲れを溜めないようにする」ことが必要不可欠なようです。

 そして「弟」は、緊急用のお金に手を付けなくなった時に始めて自立できるのだと考えています。



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